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反抗期に

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反抗期は思春期の子どもに見られる取り扱いの難しい時期。自分というアイデンティティーの確立に葛藤を抱える時期で、心は子どもでもあり大人でもあり、本人もどちらに従えばいいのか心と行動の一致に難しく、思考や感情の選択をコントロールしきれない未熟さを残しています。
反抗期がない子どももいますし、反抗の程度も子どもによって差があります。子どもの複雑な態度に親や教育者が混乱することもありますが、「反抗期とは成長の過程、自分も通ってきた道」と一過性のものとして捉え、大きな問題としないのが通例です。
しかし、反抗期はあなどってはならない、子どもからの大事なメッセージを含んでいることがあります。それを無視すると、子どもは子どもから大人への変換に失敗し、人生を続けることにおいて大きな問題を残してしまうこともあります。

反抗期では自分に対して親がすることが何もかも気に入りません。例えば、出てきたご飯が気に入らない。「○○に行ってくるから」とわざわざ言われるのが気に入らない。かといって何も言わずに出掛けられればそれも気に入らない。何しろ、全てをイライラ感情の素とし親を責める態度が表れます。
感情が湧き上がるときに、特にネガティブなものでは人間はその理由を見つけようとします(感情の訳を考える行為参照)。「あれがこうだから」と何かしら非を見つけて機嫌の悪さを正当化しますが、反抗期の子どもの場合、イライラの素は自己の心と身体の変換という経験したことのない自覚されない不安からくるストレスにあります。

『自立』について、生き物には本能的な欲が働きます。それまで自分に安全で十分な食と住が与えられてきたところから、「自分でやる」という準備をし技を生き残りのために身に付けようとするのです。親が子どもの決断権を取ってしまったり、事を任されなかったりするようなとき、自立への欲が満たされない・尊重されないことが子どもの内側で認識されます。すると自立欲は抑圧されるため、その不満がストレスや怒りとなって表されます。

反抗期を迎えるまでに親子の信頼がしっかりと確立されている場合では、安定した自尊心を持ち、自主性を育て責任感を育て、自己というものの把握を行い、問題なく精神の安定した大人へと成長していきます。
逆に、親子の信頼関係がしっかりと構築されてこなかった場合では、自己肯定感が低く、親をロールモデル(この人みたいになりたいという人物)としないことがほとんどです。自己はどこへ向かうのか、迷っていることすら自覚はないので、不安定さばかりを感じてしまうことになります。自己が安定していない状況では、人間は必要以上に攻撃的になったり逆に内に閉じこもる傾向があります。自己のあり方を見つけるのに、外へ向かうか内へ向かうかです。

こうしたらどうでるか、のような大人の反応を見ることは反抗期ではなくても子どもは行います。むしろ、大人に対してだけではなく子どもの間でも行います。これは人だめし、自分だめしの行為です。そのときの反応を見て、自己の位置付けを行っていきます。例えば、おもちゃが欲しいとだだをこねたらすぐにおもちゃが与えられれば、この人にはだだをこねれば自己の欲は満たされると学習します。同じことを違う人にやってみて、おもちゃが与えられなければその人とは違う接し方を身に付けていきます。
反抗期ではふてくされた態度を母親に見せてみます。このとき母親がこびへつらうように子どもを扱えば、子どもは母親を自分より下だと格付けするでしょう。その母親が頭ごなしに叱るときがあれば、素直に聞くのとは全く逆の態度を見せます。

親が子供の変わりやすい機嫌や態度に翻弄されると、子どもはそれを大きな非として捉えます。一貫性のない親の姿勢は尊敬すべき指導者とは符合しないのです。子どもが求めていることは、自分の言うことを聞く親の態度ではありません。自分を自立へと導いてくれる態度なのです。
この期は社会的影響を強く受けるため、親がロールモデルでなければスクリーンの向こう側の人以外では年上の兄弟、各種教育機関の指導者、先輩などになりたい自分を探します。ロールモデルがサッカーのうまい人なら、子どもはサッカーに熱を入れるでしょうし、ロールモデルが万引きのプロなら、自分もうまくやって褒められたいと思うようになります。

信頼関係の前に愛情が不足してきた子どもの場合では、どうして自分はわかってもらえないのか、どうして自分は認められないのかう、どうして自分は放っておかれるのかという困惑から、無意識に親の感心を試そうと反社会的な行為や自虐行為に及んでしまうこともあります。
誰しもイライラしている自分というものは「好きな自分」として捉えられるものではありません。自己に否定的な感情を抱けば、それは更なる不満となり、そもそも何が始まりだったかすらわからなくなると問題解決の糸口を周りも本人も見失い、事件に発展してしまうこともあります。
非行に走ることなく大人になっても、自尊心と自信の欠如のため、目標をいつも途中で諦めてしまう大人になったり、恋愛でいつも自分が不幸になる人を選んでしまったり、人間不信や社会適応能力に欠け引きこもる大人になってしまったりという傾向にあります。

しっかりと問題に向き合い、子どもの不安を理解して解消に勤め、やらせて褒めて自立を促し、自主性を尊重しながら子どもが前のめりにつまずくのも後ろへ倒れるのも支える心構えを見せ、仕事を任せて責任感と充実感を体感させ、自己に対する肯定感(自尊心)を持てば子どもは安心して大人になっていくことができます。

わざわざ問題となるような行為を起こす場合、悪い子というラベルを貼って粗末に扱うのではなく、悪いことをしなくてはならない心理を少しだけ考えてあげてください。なんでこんなことに、という結果を招かないために。
継続する反社会的・非人道的行動は行為障害として、専門家の助けが必要となります。
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