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子供を勉強好きにさせるには

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子供が学ぶことを好きになるためには、保護者が「勉強って楽しいね」という態度を、本心は別として、示すことが大事です。「面倒くさい」「仕方ないからやるだけだ」といったような言葉は、子供の前では一切発さないようにします。
子供にとって、全てのことは新しく学んでいくことであり、抽象的な物事についての観念も、行動様式も、社会の第一要素である家族から刺激や教育を受けて自分のものにしていきます(social learning theory)。
学校の勉強の得意不得意は遺伝にあるという研究結果もあるにはありますが、遺伝よりも大きく影響するのは環境です。 親が「俺も/私も勉強苦手だったから、お前(子)もできなくてもしょうがないよ」という態度でいると、子供は私たちが思っている以上に親の言うことを素直に吸収し、自分自身について「勉強はできなくてもしょうがない」という観念を定着させてしまいます。
ある親は、勉強についてプラスの価値観を持っていないので、子供の学びに関する全面的なサポートを軽んじたり、子供が抱く「何でだろう」という好奇心を刺激し助長させるやり方をそもそも知らなかったりします。
この環境のせいで、子供の知識欲は芽を出さず、進んで課題に取り組んで更なる新しい知識に頭を突っ込んでいこうとするチャンスを逃します。すると出される課題は面倒くさいただのやっつけ仕事になりますので、勉強がだんだんと億劫になります。この子供の学習態度から、結果があまりよろしくないと、親は「やっぱり遺伝だ」と端的に答えを出しがちですが、実はそれは子供に学習の環境を与えていない自分の正当性を打ち出しているだけのこと(confirmation bias)なのです。
このパターンとは逆に、子供にはできる子になってもらおうと、極端に勉強を強いる親もいます。 「やりなさい」といって動かすのではなく、子供が自然に勉強がしたくなる環境を作ることが先です。

では、具体的に子供が自然に勉強したくなる環境とは?
冒頭に続いて2個目になります。
「やりなさい」と怒鳴らないこと。やれと怒られれば、仕方なく、作業として宿題等はこなすことはできるでしょう。しかし勉強に興味を持つためには、勉強が楽しいということ、あるいは楽しいことにつながるのだということを体験を通して脳に定着させていく必要があります。
実例ですが、私のかつての教え子では、父親と息子が一緒にお風呂に入るとき、国の名前を言い合うなどのゲームをするなどしたそうです。 彼の学年(当時小学4年)では、まだ学校で必要ない「国の名前を覚える」という学習なのですが、覚えるとゲームが楽しいという感覚をまず身につけることができます。「覚えることは楽しい」という観念により、もはや国の名前に留まらず、いろんなことに対して覚える意欲が産まれます。(これは行動主義心理学で着目される「古典的条件付け」という行動の身につけ方です。) この子はあらゆる知識に対する欲を育て、勉強はまるで苦ではなく、やがて国立の大学へ進みました。
またある子は、漢字の書きが大の苦手で、テストも練習もブン投げる程でした。漢字を「こまじめな面倒くさい勉強」という捉え方をしていたので、漢字をただのツールとし、そのツールを使ってゲームを行うことにしました。「さんずい」が付く漢字を知っているだけ書き出させます。悩んでいるところに「水に関係することならだいたいさんずいが付いているよ」ヒントを与えて刺激します。言葉は出ても、漢字が分かりません。すると次の回には漢字を自ら調べてこられるようになったのです。この子もやはり、さんずいから飛び出して、漢字の問題集をお母さんに買ってもらうお願いをするまでになりました。
楽しいと思わせるのに、最初の題材は子供が好きなもので構いません。子供はそこから自分で学習範囲を広げていきます。学ぶことの楽しさと、できたときの気持ちよさを体験し、勉強という行動が繰り返されるようになります。この間、脳内ではドーパミンという神経伝達物質が分泌されています。ドーパミンは「もっともっと!」という気持ちを起こさせる物質なので、自ら学習に臨むようになるのです。
逆に怒ったり緊張させたりすると、ストレスホルモンが分泌されます。ストレスホルモンは脳内で認知機能を鈍らせる働きをします。よって、記憶力も下がりますし、作業が波にのりませんから、逆効果になってしまうのですね。

もう一つ大事なことは、勉強する間の空間的環境です。 子供は自分のお部屋や机をもらい、勉強にさぞ集中できるだろうと親も期待します。特に母親が家事で忙しくしている間では、自分の部屋できちんとやることはやっていてもらいたいですよね。しかし、子供にとっての勉強部屋は静か過ぎてしまい、少しさみしくて楽しくはないのです。
理想はリビング及びダイニングなどの生活スペースで、雑音に囲まれながら作業に取り組める場です。この方法の良いところは、何しろひとりぼっちにされている感がないという点。もし何かの場合、家の誰かがそこにいてくれる安心感があります。心が落ち着かない状態では、脳が感情の均衡を保つことにエネルギーを使いますから、自ずと他の認知的作業に力が回らなくなります(self-regulatory system)。二つ目は、どの情報に注意を注げばいいかという選択注意力を育てることができることです。三つ目は、周りがうるさくても「入り込む」という技、集中力を鍛えることができます。
親は親で自分の仕事に集中したいのはもちろんなのですが、「ちょっと分からないから来て!」のような呼びかけには、表情を含めて「うるさいなぁ」的反応は決して見せないようにします。分からないことをはっきりと分かろうとする意欲を踏み潰さないためです。手が離せないような場合は具体的な待ち時間を告げ、それまでちょっと待たせるようにします。約束を守ることで子の親に対する信頼が増し、心の安定感を育てます。(これは勉強のことに限らず重要なことで、この安定した親子の結びつきがないと、子供は将来人間関係で悩むことになります(Ainsworth)。)
つい忙しいので「なんで学校で勉強してきたのに分からないの?」と放ってしまいそうになるのですが、質問や疑問の投げかけに否定的な態度が返されると、子供は学習に対する興味を失うとともに、それを人間性の否定と取ります。分からないものを分からないままにしてしまうようになる他、発言を抑える癖を付けます。また、人間性の否定を感じると自尊心が低くなってしまうので、萎縮させないように注意してください。

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